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記事: GERMAN SCHMALTZ [BUTTER SCHMALTZ]

GERMAN SCHMALTZ [BUTTER SCHMALTZ]
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GERMAN SCHMALTZ [BUTTER SCHMALTZ]

◯ シュマルツ(ドイツ語:schmalz)
主に家禽の動物性脂肪を融かして精製した食用油のことで、
炒め物や揚げ物に用いる他(発煙点が高いとされている)、パンに塗って食べたり、菓子作りにも用いる。
味の料理やパンにバターとシュマルツをたっぷり塗ったもの[シュマルツブロート(Schmalzbrot)]に塩や香辛料を加えたり、脂肪を熱して抽出する際に刻み玉葱と共に熱して香りをつけたものもある。
シュマルツ(動物性脂肪)とバターシュマルツ(乳脂肪:澄ましバター)があり、
後者はギーよりも加熱時間が短いものをいう。
シュマルツの製法には、乾式と湿式の2種類がある。
動物の皮や脂肪を刻んだものを加熱して脂肪分を抽出する乾式
と、蒸気を利用したり少量水で煮て脂肪を抽出する湿式がある。

ギーと同じく抽出した脂肪を濾して不純物を取り除き、冷まして常温保存する。
ドイツやオーストリアの家庭では、
余った脂肪からシュマルツを作ることも多い。
寒冷で穀物が育ちにくい過酷な大地で生き抜くための先人の智慧であり、
命の恵みを残さずいただくといった精神性も窺える。
そのため、シュマルツを抽出した後に残った脂肪や皮などの小片は、ドイツ語でグリーベン(Grieben)、イディッシュ語でグリベネス(gribenes)と呼び、ジャガイモやキャベツ料理、ザワークラウト、麺料理(ヌーデルン:Nudeln)などのトッピングにしたり、ヘルツェル(ソーセージのようなもの)に加えたりする。

シュマルツ製造の行程で、ギーと同じく水分や蛋白質が取り除かれ、長期での常温保存が可能となる。また、コンフィ(フランス料理における保存性を向上させる)
のように肉をシュマルツ(油)で揚げてから冷まして保存することもあった。

ドイツ語とイディッシュ語の「シュマルツ」は
動物性脂肪を溶かして精製したものを指し、語源はドイツ語で「獣脂」を意味する名詞「シュマルツ」(Smalz)と、「溶かす」を意味する動詞「シュメルツェン」(schmelzen)から由来する。

ドイツでは、特に北部ドイツとシュヴァーベン地方でニワトリ、アヒル、ガチョウなどのシュマルツが多用されてきた。
ブレーメン名物のクリスマスの菓子パン、ブレマー・クラーベンまたはクレーベン(Bremer Klöben)には、家禽のシュマルツとバターが入る。
前述したシュマルツブロート(Schmalzbrot)は、サラダ・タンポポの若葉・キャビアなどをのせて食べること
もある。
元来の野生飼育のシュマルツには動物性脂肪特有の強い風味があるため、シュマルツブロートで食べる時には、パン
は栄養価と酸味があるライ麦パンが好まれている。

シュマルツブロートはドイツ東部では好まれるものの、西部では健康志向
からバターが入っているためあまり好まれないなどといった現地の食文化や志向があるのも面白い。

ドイツ語圏の狩人の間では、アナグマなどの皮下脂肪、南部方言ではブッターシュマルツ(Butterschmalz、「バターシュマルツ」) と称するなど、それぞれの土地、文化、気候、環境などによって、シュマルツの原材料の動物や、食べ方など様々ある。

◯ バターとシュマルツの精神的違い
ユダヤ教の食事にはいくつかのルールが存在する。
乳製品を肉料理および肉料理と共に供される食品全般に
使うことができない。
肉は全ての血を抜き取ってからいただくなど規則がある。

東欧系ユダヤ人(アシュケナジム)は肉を含む献立にバターを使うことができず、過酷な大地のため植物性油脂の入手も容易ではなかった。
そのため、シュマルツは動物性とはいえ、生活に欠くべからざる調理油として重宝され認められていた。
シュマルツは東欧系ユダヤ人の伝統料理にそれ特有の風味を与えるため、クニッシュ(東ヨーロッパの伝統的な軽食)などにはシュマルツは必要不可欠な食用油とされている。
北米では鶏の飼育が最も盛んであるため、米国で
はシュマルツというと家禽の鶏を指すことが多い。

こういった飢えの時代の「生きるために食べる」環境の背景からか、現代社会
で人間がカテゴリー化した「VEGAN(完全菜食主義)」や、宗教的規律といった枠を逸脱し、シュマルツやギーは明日を生きるために、精神性・生存本能的に許されてきたのではないだろうか。

それが今日、VEGANでも
① 自然妊娠、母乳育て、老衰飼育の
田野畑山地酪農グラスフェッド100%ギー
② 牛乳とお肉を基本的に販売しない屠畜も年に家族が食べる1頭ほどの北海道放牧グラスフェッドギー
の質の良い
ギーであれば取り入れてみるといった方々が増える理由は、我々人類には本来ある生存本能的・遺伝的背景が影響しているのかもしれない。


◯ シュマルツの種類
 ○ ヘットシュマルツ:牛のシュマルツ 
  ヘット(牛脂):牛の脂を精製した食用油脂。融点は35〜55℃。
 ○ ゲフリューゲルシュマルツ:鶏のシュマルツ 
 ○ エンテンシュマルツ:アヒルのシュマルツ
 ○ ゲンゼシュマルツ:ガチョウのシュマルツ 
 ○ シュヴァイネシュマルツ:ラード(豚脂)のシュマルツ
 ○ レバーシュマルツ:肝臓のシュマルツ

◯ その他の脂
 ○ ラード(豚脂):豚の脂を精製した食用油脂。白色のクリーム状。融点は27〜40℃。
 ○ シャル・トス:牛の乳を鍋で煮て、表面にたまった脂を取り出したクリーム(=ウルム)
  あるいは加熱せずに
おいてたまった脂肪分を分離させたクリーム(=ズーヒー)を加熱し、
  精製して作られるバターオイル。モンゴルで使われる食用油。
○ スエット・スーエット:牛や羊の腰の腎臓付近の脂。
  イギリスなどではミンスパイやプディングといった蒸し料理
に使われる。
  融点は45〜50℃。

監修 ヨガ栄養士&マクロビオティック愛好家
協力 オーストリア人